2020-06-24

製造小噺3 「めっき」

プロダクツレコード

ものづくり記録  第3話 「めっき」

めっき、鍍金、滅金、他。様々な表記がありますね。

カタカナで「メッキ」と表わされることも多いので何となく外来語風な印象ですが「めっき」は日本語なのです。

技法自体は仏教の伝来に伴い大陸から伝わって来たものですが、その語源は滅金(めっきん)から後に変化して「めっき」になったと言われています。 (めっきん→伝来当初は金を水銀に溶かしたものを仏像などの表面に塗布し、熱加工により水銀のみを蒸発させ、金塗膜として残す焼着法でした。焼着過程であたかも金が水銀の中に消滅してしまうかのように見えるため「滅金」と称したようです)

さて、製造の歴史に飛躍的な進化をもたらしたものは「金属」の存在です。 土器や石器は機能に限度がありますが、金属は自由に加工ができ硬いため、金属の利用で文明も産業も飛躍的に進歩してきたのですね。 が、しかし。

地球に酸素があるかぎり、素材は「酸化」に抗うことはできません。 そう、金属は錆びるのです。

めっき伝来当初の目的が「防錆」だったのか、「装飾」が主であったのかはわかりませんが、金属の表面に皮膜を作り空気を遮断することによって、錆や腐食を防ぐ。この工程が金属の加工仕上げの要になっていることはまちがいありません。 例えばめっきの通電性や摩耗のしにくさ、摺動性などは、素材単体の短所をめっきで別の素材を組み合わせることで新たな機能を付与させたもの。 地味ながら重要な「応用技術」の進化。これがめっきが担ってきた本来の役割とも言えるのでしょう。

過去には公害問題や健康被害などもあり、決して華々しい技術とは言い難い側面もあるのですが、産業分野のみならず、現在では味わいのある表面仕上げという価値観において広く認識され、装飾観点からも「素材感」にこだわる生活分野や建材分野から要注目の技術です。

 

めっきといえば、水周りにも。

水栓色

1. クロームめっき
美しく青みを帯びた平滑な光沢で、耐久性 耐摩耗性に優れている。(水栓はニッケルクロームめっきが一般的) お手入れが楽。
2. ニッケルめっき
装飾性、耐食性に優れるが強度はクロームめっきに劣る。黄味がかった温かい光沢が特徴。(豆栓のみ)
3. ブロンズ仕上げ
銅めっきの一種。表面を着色し、手加工でヘアラインを施すため表現に個体差がある。表面が柔らかいのでお手入れに注意が必要。
4. ブラス仕上げ
水栓製造用の銅合金(青銅・黄銅)を成形し、磨きのみで仕上げたもの。表面はすぐに変化しはじめるが市販のポリッシュ材で光沢は蘇える。  ※ 「ブラス」は通称

エッセンスの顔とも言える金属色バリエーションの水栓金具。 ご紹介した当時(平成十五年頃)はまだ一般製品化は珍しく、また「めっきを施さない」という(掟破りな)提案も加えたことから、後々まで経年変化について時間をかけての説明が必要でした。 現在では徐々に認知され、エッセンスでは同色の給排水金具(サプライ)と組み合わせるスタイルでご提案しています。

 

特にご質問を頂くことの多い「ブロンズ仕上げ」。

独特の渋い風情が人気ですが、これは銅めっきを施した素地、または研磨した素地に直接「ヨゴシ」をかけ手作業で模様をつけていくもので、黒っぽい表面はめっきではありません。 塗装で被覆をしますがメラミンスポンジなどでも強くこすれば落ちることがあります。また下地の「銅」が腐食し緑青が浮き出ることもあります。

・ブロンズ加工は手作業です! / 治具に取付け腐食液に浸す

ブロンズ加工

・触れると取れるので要注意!

ブロンズ加工

・ヘアライン加工も手作業で 職人のセンスが発揮される

ブロンズ加工

経年による変化で下地の「銅」が腐食し緑青が浮き出ることもあります

ブロンズ加工の腐蝕

 

 

 

 

 

 

「ブラス仕上げも」また、めっきによる「金色」ではありません。

水栓を生産する合金範囲は工業規格で定められており(銅と亜鉛などの合金/混合比率により金色の色味が変わります)素材色が元々金色なのですが、そのままでは腐食を始めるため、輝く「恒久な金色」にこだわる場合は一般的には真鍮めっきをします。

1・合金素地色/左:ブラス仕上げ  右:めっきやブロンズ加工前の仕上げ

2・左:ブラス仕上げの変色薬品で腐食させアンティークな味を出したもの

3・右:ブラス仕上げの変色 屋外に10年も置くとすでに金色の片鱗もありません

 

変わらないものと変わるもの。

設備品なので機能面では「変わらず長持ち」が良いのは当たり前。片や「表情」のお好みは多様で然るべし。変化することだって選択肢の一つです(若干の勇気は必要ですが)。 水周りのような環境は変化の具合が各々大きく異なるので、お客様からのご報告で驚かされることも実は未だに少なくありません。

 

このように、エッセンスでは表現としてめっきをしない選択もしていますが、クロームめっきのような実務にかなった仕上げも良いものです。 手入れが楽、丈夫、などという質実剛健な印象が強いのですが、手入れされながら長く長く使われている水栓などの、めっきも薄くなり素地が見えかかっている風情などはまさに「モノ冥利につきる」というもの。 変わらず人の暮らしを支え働くモノへの愛しさすら感じます。

・通常の電気めっきライン 脱脂、酸洗浄も一貫オートメーション

めっき工程

 

ニーズや素材でモノ作りの常識、環境が変わりますし、デザインや風情もそれに伴います。 難しいけれど大切なのは「時間」を意識し想像するモノづくりかもしれませんね。

「めっきが剥げたからもういらない」などと言われないように。

 

追記/化学の美?

・クローム水溶液浴槽は鮮やかな黄色、ニッケル水溶液の浴槽は青緑色をしています。

・ニッケル水溶液槽に付着する翡翠色の綺麗な結晶。 でも‥  原料の扱いは中々ハード。こんなマークあまり目にする機会も無いと思いますので。

 

以上、現場からでした。

 

関連記事

    関連記事はありません